清水焼の郷探訪

「清水焼の郷探訪」は2005年頃から2010年頃までに外部記者が取材された内容をまとめたものです。日時や名称など現状と異なる点もございます。予めご了承ください。

第20回

共鳴する 土と炎の美

森野泰明

  • 昭和9年 京都に生まれる
  • 昭和32年 日展初入選
  • 昭和33年 京都市立美術大学卒
  • 平成元年 ユーロパリア‘89ジャパン「昭和陶芸-伝統と革新」(ベルギー・モンス美術館)
  • 平成2年 土の発見-現代陶芸と原始土器(滋賀県立陶芸の森、陶芸館)
  • 平成3年 発動する現代の工芸1945-1970(京都市美術館)
  • 平成4年 日本の陶芸「今」100展(パリ・三越エトワール)
  • 平成5年 現代の陶芸 1950-1990展(愛知県美術館)
  • 平成6年 平安建都1200年記念美術選抜展(京都市美術館)
  • 平成7年 日本工芸展(ロンドン・ビクトリア&アルバート美術館)
  • 平成8年 現代日本陶磁の秀作・アジア巡回展
  • 京都府文化賞功労賞受賞
  • 平成9年 日本現代陶芸大家展-若き日の作品群(エンバ中国近代美術館)
  • 平成10年 やきもの探訪展(東京・京都・その他)
  • 平成11年 京都市文化功労者
  • 平成12年 京都市芸術大学創立120周年記念展(京都市美術館)
  • 平成13年 京の工芸inエディンバラ展(エディンバラ・シティー・アート・センター)
  • 平成14年 現代陶芸100年展「日本陶芸の展開」(岐阜県現代陶芸美術館)
  • 平成15年  現代陶芸の華(茨城県陶芸美術館)
  • 現在 日展評議員・国際陶芸アカデミィー理事・京都工芸作家協会会員

主なパブリックコレクション
東京国立近代美術館・京都市美術館・京都国立近代美術館・京都文化博物館・京都市立芸術大学・セントルイス美術館・デンマーク王立工芸美術館・エヴァーソン美術館・国際交流基金・和歌山県立近代美術館・外務省・アリアナ美術館・フィラデルフィア美術館・ルーブル パリ装飾美術館・ビクトリア&アルバート美術館・国立国際美術館・岐阜県現代陶芸美術館・ソウル市美術館・メトロポリタン美術館・ブルックリン美術館

志 ambitions

 「これよりひがし五条坂」と記した小さな石碑が、五条通り、大和大路の東北の角にある。五条坂はその界隈のやきものの町の呼び名でもある。戦前の五条坂は道幅四メートルたらずの道であった。昭和二十年の終戦間際の強制疎開によってその南側の家が撤去され今はもはや昔の面影は想像できない。その小さな石碑が五条坂一帯が登り窯を要した一大陶業地であったことを偲ばせてくれる。
 「今では、想像もつかないが五条坂はやきものがあっての共同体の町であった。やきものは勿論のこと、その製造に関連する無数の業種の人達が住み、そして、生活に密接に関りのある多数の店が存在するコミニティが成り立っていた。」祖父の代より五条坂の地でやきものに携わり、自らもその道に進んだ森野泰明さん。自然と家業を継ぐことになった原点は、五条坂に生まれたことにある。

 「子供の頃は、窯場も含めた五条坂が遊び場。土の材料の性質とか、やきものの創りの養分みたいなものが無意識のうち自然に吸収できた場所でした。家業を継ぐとか意識せず、自然の流れでやきものの世界に入りました。」京都美大卒業後、単身アメリカへ渡り、大学で陶器講座の講師を三年半担当した。人種も考え方も違う新しい環境は、自らの作風に影響を与えたという。

 「京都、パリ、ニューヨークと時間的には同時代性という横糸はあっても、同地域性ではない。作り手の背景にそれぞれの地域の特色がなければ個性は存在しないし、そこに住む必要がない。そこから何が発信できるかどうかが問題です。自分の血の中に引きずっている京焼きの美意識のDNAをあえて否定することなく、自分なりの世界を自分なりの言葉(作品)でかたっていけば、自分なりの新しいものが出来ていくと考えます。それが国際化につながるのではないかと思う。」

技 skills

 森野さんが、作品を確たるものにしたのは、四十歳手前のことだという。
 「それくらいの月日はかかります。自分のものができるというのは、イメージ通りに近づけるということ。やきものは窯に入れて人間の手を離れるからね。他人の使った釉薬でなく自分の釉薬を用いたいし、現代の自分の色をと思うから莫大なテストをします。フォルム、材質感、色彩、装飾のすべて互いに響きあい、一体感をもって緊密に結びつく。このような作品をと考えて制作をします。しかし、やきものは不確定要素が多く、うまくいったり、失敗したり。そこはギャンブル性があって、面白いところ。」

 手びねりで形作られていく丸みを帯びた温かいフォルム。装飾的でありながらかつそのフォルムをなぞるように描かれる模様。そこに火の洗礼を受けて、焼きつけられた色彩が一体感をなす。土と火という人知の及ばない自然の産物に対して、この調和を実現させることは並大抵のことではないだろう。

声 voices

 やきものは、素材が土と釉薬と炎と非常に限定される世界です。材料があって、工程があって創る。我々のやきものは、手仕事であり、工芸です。工芸は人間が生活する空間に存在し、関りあい何かを醸し出していく。やきものを通して私の空間と誰かの空間が出会う。その時伝わるかどうかですが、・・・・・・。
 やきものを無理にこう見ないといけないといった薀蓄はなしに、その人その人の感性で、 好き嫌いを決めるのです。その上で、どんどん多くのやきものを見て、好きになってもらい、そして、やきものの良さをわかってもらえたらいいですね。

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