清水焼の郷探訪

「清水焼の郷探訪」は2005年頃から2010年頃までに外部記者が取材された内容をまとめたものです。日時や名称など現状と異なる点もございます。予めご了承ください。

第42回

生けてこそ叶う。花と器がなす形・色の調和

京陶苑華善 山脇敏伸

京都府京都市山科区川田清水焼団地町4-6
TEL.075-581-5556
FAX.075-581-5556

志 ambitions

 「人間」「男と女」をテーマに釉薬の多様な色調と大胆な形で作品に魅力を生み出す作家、奥山善一さん。その奥山さんがプロデュースする窯元「京陶苑華善」では、娘婿で後継者の山脇敏伸さんが現場を切り盛りする。
 もともと縫製業の職についていた山脇さんが、義父である奥山さんの後継ぎとして家業についたのが30歳の頃で、結婚して3年後のことだった。それまでは、陶器について勉強したことも作ったこともない素人で、文字通りゼロからのスタートだったという。

 「前から義父には手伝ってみないかと言われていました。縫製業も製陶業もものづくりということでは変わりはありませんから、継ぐと決めた時は、あまり抵抗はなかったですね」と、山脇さんは振り返る。まずは釉薬を学ぶために2年間、京都市工業試験場に通った。その後、成形を奥山さんや窯元で働く職人さんから学びながら身につけていったという。

 「陶器製作はろくろをする職人、絵付けをする職人という風に、本来分業なのですが、私の立場は、成形も釉薬も一通りできねばなりません」と山脇さんは話す。そうすることで、自分ひとりで作り上げる技術が身につけられ、また、山脇さんの主な仕事の一つでもある奥山さんの起こした図案を職人さんに上手く伝え、商品を作り上げるという作業がより正確になるからだ。

 「ただ、成形は特に難しいですね。10年ほど義父には習っていますが、なかなか満足できるには至りません」

技 skills

 山脇さんの言う「成形の難しさ」は、窯元の作風にそのまま反映される。花器を中心に展開する品々それぞれは、独自に研究して作り上げた百種類ほどある釉薬から選りすぐられた「色彩」の組み合わせと、やわらかな丸みから鋭い角度までを自由に帯びた「形」から生み出される。この挑戦的な、花々と器との間にあるせめぎあいが京陶苑華善の特徴であり、また、それが見事な調和をもたらすという点が、魅力なのだろう。華道家を始め、料亭の女将から一般家庭まで、花器として望む人が絶えないのは、その調和に魅了されるからなのかもしれない。
 「花の生け易い形というのは、ある程度決まってるんです。それにあまりはみださないように、形の面白さを追求する。高さを変えたり、口の大きさを変えたり、どこかを膨らませてみたりして形を決めるのですが、忘れてはならないのは、花あっての花器であること。華道の先生や実際に花を生ける方から意見を参考にすることがありますから、私たちの作品は花を生けてもらってこそなんです。だから、オブジェとして飾ってもらうよりも、そうやって使っていただく方がやっぱり嬉しいですね」

声 voices

 土から形を自在にアレンジするには、失敗がつきものです。5個中3個が焼いている途中で割れてしまって、商品にならない場合もある。リスクは大きいですが、そういったものほど、面白いものができます。
 また、手作りだからこそ、1点1点違う形に挑戦できるのも、陶器の魅力の一つだと思います。出来上がった瞬間、「いいのができたな」と感じられることができたら、これほど嬉しいことはありませんね。

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